鈴虫と蝉
Oz

とりあえず
鈴虫が言ったんだ
「蝉なんて叫んでいるだけ。
美学なんてありゃしない」
蝉は言う
「僕のは魂の叫びだ。
全生命を賭けた
魂の叫び。
そこに綺麗さなんて無い
ただ泥臭い
本気の猛りがソコにはある。
これこそ美学だ。」
僕は言う
「どっちでもいいさ。
それが君たちの美学なんだろう。
でも、鈴虫、
まだ君の時期では無いよ。」

でも、折角普段出会わない
二人がいるんだ
君たち二人で
歌ってみたらどうだい
あるいは
何かが起こるかもしれないよ

リンリーン
ジージー
リンリンリーン
ジージージー
リンリンリンリンリーン
ジージージージージー

「五月蝿い!!」

あまりに五月蝿いものだから
僕らの回りには
沢山の訴えが。
葉っぱが降ってきて
音を遮断
警察が警棒で
叩き潰そうとする
蝶々がワッと舞う

「五月蝿いとは何だ!?」

寝ていた鈴虫が起き出す
蝉が最後の輝きを見せる

発起人の僕はその場を取り繕う
「踊ってみましょ!!」
とりあえず、
ディスコダンス
兎が
とりあえず
ジャンプ
鹿が草をムシャムシャ
熊がやって来て
樹にパンチ
ド〜ン!!
オバサン叫び出す
ギャー!!
蜂が
ブーン

何だろう楽しくなってきた気がした

少女がバイオリンを弾き出す
ウシガエルが鳴く
グェー
鶯ホヘキョ!!
雷ドーン!!

雷?
関係無いね

回りにはもう
多数の何者かが
何者かが
たくさん
踊り出す
歌い出す
叫び出す
足を踏み鳴らす
ジャンプする

は〜、
僕は疲れたから
切り株に座るお婆ちゃんに
ジュースを貰う

「わぁ、美味しいですね」
「えぇ、この山からとったシソから作ったのよ」

そのジュースは本当に美味しかったんだ
だって
喉がカラカラだったものだから


自由詩 鈴虫と蝉 Copyright Oz 2010-08-19 18:47:22
notebook Home 戻る