狭間に住まう声
高梁サトル



八月の
舌の上で溶けてゆく氷
その所作
吐息

の並びを
ひとつひとつ
読み上げる
その要約の中に
静かに埋もれてしまいたい
針を
正午に合わせた時計が
生物的な誤りと
機械的な正しさの間で
鳴っている



メランコリックな竪琴の
音が窓辺に漏れる頃

さびしいと呟き眠る子に
真白なシーツを掛けながら
陽を含んだ唇で
おやすみと囁いて

一枚の銀貨を右の掌へ
「私が誤りを犯さない為に」
そこにあらゆる負い目を封じ
もう一枚を左の掌へ
「あなたが正しさに溺れない為に」
ひとつの起源をイメージしながら

けして重ならぬ
伴侶へと誓う


自由詩 狭間に住まう声 Copyright 高梁サトル 2010-08-15 23:38:33
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