蝉の鳴くのを聞きながら
吉岡ペペロ
彼女はこの夏よくがんばったから
さいごの日に
軽く打ち上げをおんな五人でする
だれもがだらだらしたり
旅行をしたりしているときに
すこし閑散としたいつもの道を歩き
電車を乗り継いで車内広告などにも見慣れ
彼女は夏季講習に通いつづけたのだった
邪魔をするのは嫌だったから
この四日は読書ばかりして過ごした
夕方の風は知らぬまにほどけ
蝉が色あせた夕方を惜しむように鳴いていた
彼女の幸福にとって
社会制度上の存在にはなれない
だから彼女の存在じたいを応援している
彼女もたぶんそうなのだろう
薄い青いろの風のなかを
彼女は蝉の鳴くのを聞きながら歩いている