落下女/wind
ゆるこ

・落下女


その両手を手放した瞬間から私の落下は開始していた
たまに香る金木犀は私を拒絶した時のまま咲き誇っていたから
もう望むことを忘れた脳内では
いくつもの事柄が変換されては生えて、命を吸っていた

胎児のようにサカサマになって私はさながら落下女
金木犀が染み付いて離れないのはそれ自体が私から生えているから
血管のようなものが皮膚を突き破り生える様はさながら世界の縮図だ

髪を乾かすことも忘れて浴槽にむかう

還りたいのだ、私は
還りたいの。


・wind

暗闇の中で誰かがずっと噎せている
痰壷はないから掃除機の音がずっとしている
きっと喉から吸い上げられた子供達は
真夏の若者達の餌になるために産まれているのだろう

ぶぉんぶぉん

産声はいつだって耳栓の先で鳴っている。

ぶぉんぶぉん、




自由詩 落下女/wind Copyright ゆるこ 2010-08-09 20:42:57
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