夢の遺影
雨音些末



街の公園から
子供たちが消えた

荒れた芝生は
威張った犬と
犬に腐随する
飼い主のためのものになって久しい

子供が遊ばない公園

夜訪れる
昔子供だった者が
たまに置いていく
ゴムの膜や薄紙も
犬しか見つけることはなくなった

子供がいなくなった公園は
四季の花が咲かなくなり
同時に夢や希望も
公園で咲くことをやめた

ごく稀に 子供の声がするけれど
昔のように安全ではない場所から
母親が子供たちを引きずりながら
自分の巣に帰る

妥協と強迫観念が渦巻く
偽物の安息の地

ある日突然現れたブルドーザーが
公園を壊し始めた

公園は形を崩す

子供たちの夢も
子供たちの約束も
子供たちの
「また あした」も

掘り
なぎ倒し
踏んでゆく重機

操作するのは
昔子供だった今の大人

夢を壊すなんて
簡単なことだ

高みを目指して上った
大きな欅の木も
影を追って走った
砂場の際も
夢を揺らした
ブランコも

みな
為すすべもなく
横たわる

夢はすべて
あってないような物で
かなうはずもない
子供の夢なんてつぶしてしまえ
すべて
バスタ!バスタ!バスタ!


なくなった
過去の子供たちは
帰る公園を失った


日が落ちて
だれも子供を呼びにこなくなった公園

だった場所

もう咆哮さえしない
恐竜の骸骨のシルエット



携帯写真+詩 夢の遺影 Copyright 雨音些末 2010-08-03 13:04:03
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