イカロス
AB(なかほど)

  

水辺のイカロスは
梅雨の数日しか舞うことはない
ただ静かに光りもせずにじっとしていれば
もう少し
例えば
今でも草陰で静かに呼吸をしている
のかもしれない


小惑星にまで触れたイカロスは
大気圏へ突入する
地球に帰るその時に
その目で見た最後の映像を送信した
それは当たり前の私達の星の姿


今朝のニュースのイカロスは
軍靴を履いて
飛んでいく先は明日でも昨日でもなく
その降り立つ先は親にも知られず
その翼は誰のために羽ばたいたのか
そのとき瞳は何をとらえて
最後の光は誰かを照らしたのか
さえも知られずに



私達のイカロスの
飛んで行く先を見守ることはできない
それでも私達の羽ばたいている姿を
命を削って、最後はもがきながらも
羽ばたいてきた姿を
少しは覚えていてくれるのだろうか

君達の足並みは、羽ばたきは、瞳の色は
揃わされなくてもいい




今年最後の水辺のイカロスは
懐中電灯に気づいてしまい
弱い光でゆっくりと近づいてきてくれた






即興ゴルコンダより



自由詩 イカロス Copyright AB(なかほど) 2010-07-31 16:48:24
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Democratic Poems