子探し
salco

子を探す母親は
探して探して町じゅうを
探して探してあちこちを
空き地を路地を公園を
橋下を覗き川面に目を凝らし
袋小路を野を丘を
森を林を墓地を巡り
家という家訪ねて回り
隣の町を裸足で走り
子の名を呼んで夕陽に染まり
埋め立て現場を掘り返し
電信柱の蔭覗き
塀の向こうへ呼び掛けて
月の明かりに泣き叫び
時の隙にも分け入って
この世の果てへも行く様子
狂おしい眼を光らせて
咽の奥で声も涸れ
足はとうとう血にまみれ
石がガラスが苛めても
骨が土をかすっても
胸をはだけてまろびつつ
吾子の名を呼ぶいつまでも

探して探して時は経ち
時など忘れて子を探す
目に触れた子という子供に駆け寄って
子という子供の顔を見る
怯えるだけの目に遭うと
弾かれたように飛んで行く
私のあの子!と口走りつつ
人なかに人さらいと我が子の
二人連れを探して回る
あの子です!あの子です!
人込みを掻き分けて
今こそ手繰り寄せられた
糸を掴んで離すまじ
我が子の名前を連呼する
肩掴まれて振り向いた
それは一対の怯えた目、
口歪め泣き出したのは
何て醜いよその子だろう!
子を探す母の走る姿に
子という子供は逃げ惑う
母親という母親が子を隠す
「わあ!気違いが来た!」


自由詩 子探し Copyright salco 2010-07-29 21:16:07
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