ブリキ電車
……とある蛙


太った女の子が座る
通勤電車の車両接続部
近くのシルバーシート

彼女の平面図は四角柱。
正方形二枚で蓋をした
立方体に近い六面体

車内温度は高い
弱冷車両だが、人の数は多い
円錐の叔母さんが叫ぶ

あんたその席に座っていいと思っているの

近くには特に老人もいない。
かわいそうに立方体に近い六面体は
赭ら顔で立ち上がり
僕の横の吊り革に掴まる

立方体に近い六面体は
直ぐに携帯を鞄からとりだし
めまぐるしい早さで
親指でキイを叩く

僕は球体なのに
汗が吹き出し
急制動の車内を転がるわけもなく
滑走して行くのだった。

六面体の熱は満遍なく車内の温暖化を進める。

転がらずに滑っていた僕は
車両の繋ぎ目のドアにぶち当たって
それからしばらくして

次の駅構内のベンチで
びしょ濡れで横たわっていた。


自由詩 ブリキ電車 Copyright ……とある蛙 2010-07-29 12:04:28
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