鬼子
高梁サトル

砂漠には
牡牛や熊や鳩や鷹
大昔
それらすべてはひとつであったと
髭づらの人が
乱れる息を
掌の中
上手にすり合わせ
微笑み
「悪疫は煮沸消毒いたしましょう」
「悪疫を煮沸消毒いたしましょう」
清められた亡骸は
防腐処理して
美しいリンネルで包み
横たわった
柩の木目を
老いた指で
撫ぜながら
(まるでひとつの
たからものみたい)
時折またたく
故郷の星を
懐かしそうに眺めます


自由詩 鬼子 Copyright 高梁サトル 2010-07-28 23:52:29
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