本当のかなしみを知るひと
恋月 ぴの
本当のかなしみを知るひとは
かなしみのあり様をあれこれと邪推せず
涙で濡れた手のひらにあたたかな眼差しを重ねてくれる
本当のかなしみを知るひとは
ひとの過ちをあれこれと論ったりせず
夜空に散らばった星屑のひとつひとつ共にひろい集めてくれる
本当のかなしみを知るひとは
ひとびとのちいさな幸せをあれこれと僻んだりせず
まるで我が事のように喜んでくれて
本当のかなしみを知るひとは
「がんばって」
そんな一言では伝えきれないもどかしさに唇は震え
寄せては返す波間に浮かぶ防波堤の突端でひとり
ひろい集めた星屑のひとつひとつ願いをこめて八月の宵闇へと流し
ひとびとのかなしみそのすべてに罪のないことを知っているが故
本当のかなしみを知るひとは