まどろみ
智鶴

毎朝、まるで無知な太陽が昇って
毎夜、全て悟りきった月が死んでいくように
僕の本当のこと
君は何も知らないままだった

夢の中でもなんとなく気付いた
これは嘘だ
気付けばきっと
あの狭いカウチで寝ているんだ

だってそこら中に輝く言葉達が
君が落していったものだなんて信じられない
それにあまりにも
哀しすぎる、僕の思った通りに
そして美しすぎるんだ

あまりにも
二度と信じられそうにない程にさ

もう一度同じ夢を見れるだろうか
そんなことは出来ないって
言われなくても分かってるさ
それでもまだ目を開けないのは
目を開ければきっと君はいなくて
只の空白が僕に囁くんだ
「全部嘘だよ」
それが今は酷く怖いんだ

緩やかに坂道を下っていく
もうすぐ僕は目覚めなくちゃならない
あんまり冷たい夢を見たから
寂しくなんかないような気がする
それもきっと嘘だ

暫くこのままにしてくれないか
まるで無知な太陽が
せめて僕の名前くらいは覚える頃までは
僕が君の名前を忘れて
そして誰かに揺り起こされるまでは


自由詩 まどろみ Copyright 智鶴 2010-07-26 00:38:25
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