余白
八男(はちおとこ)
余白が気になって
ずっと塗りつぶしていた
もう 余白が少なくなってきた
微かな余白から 蟹が掻い潜って
逃げ出そうとしている
いつのまに入ってきていたのだろう
見上げれば
空は青い 山も青い 風も青い 雲は余白だ
雲からも 蟹が這い出して 青い空を歩く
涙が流れる
涙と涙の余白から また 蟹が
いつのまにか蟹でいっぱいだ
外の世界も 心の中も蟹でいっぱいで
なにもかも 食いつくしてくれている
この 蟹で 透き通った 夏の昼間
目を瞑り 立ちつくす
手を胸に当てる
今まで聞こえなかった 音にならない 音が
ここから 山の向こうから