ディスコミュニケーション
寒雪



大通りを歩いていると
反対側にいたおまえが
大声でおれを呼び止めた
振り向いておまえを見ると
おまえは大きな声で
おれに向かって身振り手振りを交えて
なにか懸命に伝えようとしてる
だけども
おれとおまえの間を
次々と行き交う乗用車たちの吐き出す
エンジンのノイズが
おまえの言葉を
おれの元まで届く前に
空中で叩き落す


おまえの言ってること
わからないで呆然としていると
更に大声を出してるのか
顔が徐々に真っ赤になってくるのが
遠くのおれからでもよくわかる
その光景を見ているうちに
なんだかおかしくなってきて
おれは笑いを堪えられなくなった
無駄な努力なのに
一向に止めようとしない
おまえの諦めの悪さは
ほんと立派なもんさ


しばらくして
おれになにも伝わってないのを悟ったおまえは
道路を渡って
おれの元にやってきた
最初からそうすればよかったのにな


自由詩 ディスコミュニケーション Copyright 寒雪 2010-07-25 06:49:47
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