一夜
さき


黒いベールを外す瞬間を
思い浮かべて
銀の食器を並べている
今宵は月夜
一夜の逢瀬
誰よりも会いたいって
自由に伝えられない
私を可愛がって


空に浮かぶ
闇夜を切り取って
寝室に飾りましょう
熱が籠って
湿った空気をかき分けて
溺れないように
泳ぐ
もうすぐ
あの人がくる


複雑に腕に絡まる
愛のしるしを
口づけながら
溶かしていくの
夢のようだった
って言わせたいけど
夢だった
とは言わせたくない


月が欠けていく
時が流れていく
夏の夜が短いのか
今日の夜が短いのか
私たちは
どちらともなく
逆らいたいと
儚く爪を立て
切ない吐息で
会話する


ねえ
もっと
私だけを
愛してよ
足りないなんて
思わせないで











自由詩 一夜 Copyright さき 2010-07-25 00:46:57
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