冬瓜売りと石敢當
海里

冬瓜は夏の瓜
翡翠色に煮あげて冷やして食べます

石敢當さんの好物で
石敢當さんは
「これを食べると力が出るんだ」と
夏中ほくほく食べてたそうです

今では季節以外にも見かけるようになりましたが
やはり冬瓜は夏が素晴らしい
砲丸投げが出来そうな
そのまま砲弾にでもなりそうな充実した緑

かつて沖縄に雨あられと降り注いだものが
砲弾ではなく冬瓜であったら良かったのに

吹き荒れたものが鉄の暴風ではなく
深く浅く取り尽くせず今も取り残されているものが
不発弾などではなく冬瓜だったら良かったのに

石敢當さんはとても強い人だったので
島々ではT字路の突き当りにその名を彫った石を立てます
魔物はまっすぐにしか進めないので
T字路の突き当たりはそんな風にして払うのです

過去はいい
過去は取り戻せない
やり直せない
これから起きるすべての戦争に反対

冬瓜と石敢當の夏にかけて
行き止まりで
打つ手がないように見えても
他に仕方がないだなんて思わないで

     
過去作。短冊と落とし文月。
 


自由詩 冬瓜売りと石敢當 Copyright 海里 2010-07-23 19:51:40
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