お化け屋敷
……とある蛙

夏休み
坂の途中の煉瓦塀
遊び疲れて帰る途

突然、夕立の中
古いモノクロフィルムの
縦縞ノイズのような雨が降る

崩れかかった煉瓦塀の
裂け目から洋風の庭に
飛び込む
そこは荒れ果てた雑草の
勝手な方向、長さ の雑草の
渦巻く中空に雲のある
野ばらの蔓の朽ちかけた
洋風の庭が広がっている。

アオミドロの濃い
沼のような 形の崩れた池
沸々とガスが出そうな池
に大量の蛙の卵

一本 大きな枇杷の木が
太い幹に蔦のからまる
枇杷の木が 屹立する。

庭の中央に建物は無く
あるのは打ち出された
コンクリート

爆撃された海軍少佐の屋敷跡
建物は跡形もなく
剥き出し地下室の原型
建造物 いやコンクリートの箱

夕立の中、上部が煙っている
煙った上部に海軍少佐の亡霊が
略礼装で敬礼する
ぼやけた輪郭で。

ここにしばらくして
大層なお屋敷が現れた。
表札には「岸」の一文字
その後「安倍」の文字に変わった。



自由詩 お化け屋敷 Copyright ……とある蛙 2010-07-20 12:59:18
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