SURVIVOR
綾瀬たかし

 
 
 
【SURVIVOR】



 戦闘機が飛び交う空から
 太陽を背にしてクラスターボムが落ちてくる
 泣き叫び逃げ惑う人々の中
 屍に躓き逃げ遅れた男は天国へ逝った

 あの娘は歌いながら影踏み遊び
 足許に劣化ウランが埋まっているとも知らず
 花を摘み取り作った首飾りは
 やがて自分の墓へと手向けられたね

 足音を潜めて闇を駆けろ
 罠に嵌って死んだ仲間に十字を切り進め
 疲れたなら眠ればいいさ
 目を醒ました先にあるそこは地獄だけど

 我が子の墓標に誓いを立てて
 父は銃を手にして戦場へと馳せて行く
 家族を奪われた少年が
 復讐を胸に背後からその命を狙っているのに

 ここは戦場
 安息も静寂も
 喜びも幸せも
 何一つない血塗れの世界
 生と死
 平和と殺戮
 それぞれの理想が渦巻くパラドックス

 勝利を手にした者たちだけが正義を名乗れる
 生き残りを賭けたサバイバル
 太陽は沈むけど
 明日また朝を迎えられるとは限らない今日
 
 
 


自由詩 SURVIVOR Copyright 綾瀬たかし 2010-07-19 23:47:13
notebook Home 戻る  過去 未来