遠山
「ま」の字

         ︱淡々あわあわと、それはとおく


ほうほう
紅いろ帯びた西域は灼け
あれは記憶に薄れゆく
旺盛なる高温期の名残りか
あるいはまた
時のけじめなき海上に冷却せらるる
専制のかたちか。
ここに、ひとりあることに対し
はるか浮かび在るものの
なんとつめたく
またかすかに懐かしくあるいはむなしく

 ・・・・・・・ 

あの
灼けある雲の下に
暖々たる曖気に傾ぐ茅葺きの家なく
夏に
子らが河貝採るたび投げあげては
かちと突き当てあった笑いごえもない

不器用な精神は観念を維持できず
また維持する名分わけもない
この生成と消滅は病みもせず
たまたま此処この時刻に有るだけという
さびしく
砂礫の辺土はしまで伝わりゆくよそよそしさよ
寒気はつのり
沼のないこの地独特の風景に
黄昏が徐々に現れている
あちこち 
散在するものはあっても
ひっそりとして 声もない

(こちらの端もあちらの端も、夢に属する。
 こちらの端もあちらの端も、その中も。)

裸木の枝ひろがるこの地から
いったい何をみいだすべきなのか
約束もなく
待たれてもいない

細く

意味なく勁い 
この影


自由詩 遠山 Copyright 「ま」の字 2010-07-19 22:25:47
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