なりたい自分
寒雪



僕の目の前で
新しい太陽が産声を上げる
またこの土地で
新しい一年が無事に始まることが嬉しい


昨日
ボーリングしていた井戸から
やっと水が溢れてきたよ
新鮮な真水を
無邪気になって浴びるみんなを見ていたら
水に触ってない僕の心も
なんだか洗ったように清々しくて
いつまでも頬がゆるんでた


その日はみんな夜更けまで
振舞い酒で酔っ払って
それまでの辛いことを労って
本当に楽しい宴席だったよ


出発の日に
悲しげな顔で
なぜあなたなの?
と問いかけてきたあなたの声を
今でも静かな夜の帳の中で
ふと思い出すことがある


別に僕でなくてもいいのだろう
僕が手を挙げなくても
遅かれ早かれ誰かが
僕の代わりに井戸を掘って
今頃二日酔いの頭痛に悩まされるのだろう
でも僕はやりたかった
僕の存在をかけて
その仕事をやり遂げたかった


僕は
誰かがやらなければならないなら
その誰かになりたかったんだ


見上げると
夜空に流れ星
いつになるかはわからないけど
無事に帰る日まで
お互い健康でいよう
信じられない速さで三回言ってみたよ
叶うと信じてるよ


自由詩 なりたい自分 Copyright 寒雪 2010-07-17 07:25:20
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