自尊心
……とある蛙
チェロが重低音を響かせる中
正座した理屈が
墨を含んだ筆をとり
大きな美濃紙の中央に
ごつごつとした岩山を
描く
モノトーンの岩山は
山肌の陰影だけ 浮き上がり
山の際 稜線が無く
霞の中の真実は
吹こぼれる 山の息吹に
あてられる理屈の中の嘘
完成した構図の中に
あるべき枝ぶりは無い
あるべき老人はいない。
あるべき亭も無い。
部屋に充満した山の息吹に
正座した理屈がうそぶく
本当のことは
難しくなければ な
下劣な自尊心だけが
生きる縁(よすが)
畳に響くチェロの音
下腹に響く重低音
下劣で無意味な知恵の塊が
今日も漂っている。