さよならはいつものように
結城 希

オルゴールの音が止んだ
世界は 静寂と暗闇で満たされた

行き場を失った悲しみは
僕の中で ぐるぐると巡る

『あの高い塔に登ろう』

君が好きだった
この街の景色を
もう一度見よう

螺旋階段を一歩ずつ登りながら
僕はゆっくりとオルゴールのねじを巻き戻す
もう鳴らない、と知っていながら

屋上の扉を開けて
僕はオルゴールの蓋を閉じた

願いをかけるように
しっかりと鍵をかけた

そして そっと手を離した

地面に砕け散るのを見る前に
僕は屋上のドアを閉じた

「さよなら」


自由詩 さよならはいつものように Copyright 結城 希 2010-07-11 14:26:29
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