アイドル2
ホロウ・シカエルボク


彼女に会うのは二年ぶりになる。声優としての人気が定着し始めた当時、「シンガー」篠田美優としての再起を賭けた入魂のシングル、「Kick Off!」では初の作詞にも挑戦し、「殻を破りたい」という気持ちを力強く叫んだ。しかし、新生篠田美優をファンに届けたいとの気負いからくるハードなリハーサルで喉を壊し、100パーセントの篠田を見せるはずだったコンサート「Reborn!」はオーラスの「Kick Off!」までたどり着くことが出来ずわずか五曲を歌っただけでスタッフによる強制終了。一部のファンによる暴動、チケットの払い戻しにおけるトラブル…コンサート当日の深夜からコメント欄には心無いコメントが何度も書き込まれ、始まったばかりのブログ「ミユタン・ビィーッム!」は一時閉鎖という事態に追い込まれた。おまけに喉にはポリープが発見され、絶対安静との診断が下り、声優としてキャスティングされていたアニメ映画、「負けるなマッキィ!」の主人公マッキィ役も事務所の後輩にゆずる形となってしまった。本人曰く「どん底だった」日々から抜け出すことが出来たのは、眠れずに迎えたある朝、マンションの窓から見上げた青空の美しさだった…。声優の仕事を一切遮断し、気心の知れたスタッフだけでディスカッションを重ね制作された本人作詞のニューシングル、「いつだってBlue Sky」で、彼女は今度こそ生まれ変わることが出来るのか?アルバムのレコーディングに取りかかっているミユタンの熱い叫びを聞け!
(インタビュー、記事 horou)


篠田美優(以下M) : お久しぶりですぅ〜!
horou(以下h) : お久しぶりです。
M : よろしくお願いします。
h : じゃあ、早速始めたいんだけど…コンサートのことから聞いてもいい?
M : あ、わたしもそっから話したいと思っていて。
h : 残念な結果だったわけですが。やっぱり悔しいっていう感じ?
M : そうですね、悔しかったり…悲しかったりですね。バンドの人たちにも叱られたし、スタッフにも…みんなリハの段階で何回も忠告してくれていたのに、わたしひとりが冷静になれなくて突っ走ってしまって…せっかく来てくれたファンの人たちもガッカリさせてしまって……(沢尻エリカばりの間で泣き出すミユタン)。ごめんなさい、いきなり泣いちゃって。
h : 大丈夫、想定の範囲内。えーそしてまあ最終的に活動停止という事態に陥ったわけですが、その間はどんなふうに過ごしていたんですか?
M : もう、しばらくは何も出来なかったですね…一日ベッドで寝てたりとか、ボーッとして…ご飯も食べられなくなったりとか。誰にも会いたくないから外にも出ませんでした。たまにコンビニにお菓子買いに行くぐらいで。もう引退しちゃおうかなぁ、とか考えてました、ウン。
h : その状態はどれぐらい続いたの?
M : えーと、ハッキリとは分かんないんですけど、ひと月ぐらい…かなぁ。(遠くを見る)どん底、でしたよね、ホント。
h : なんだったんだろう、そこから抜け出したキッカケというのは?
M : それがもうバカみたいな話なんですけど…最後の方はもう眠れなくなっちゃって、一晩中起きてたりとかしてたんですけど、ある日、寝室のカーテンを閉めるの忘れてたことがあって…明け方にちょっとウトウトしたんですけど、目が覚めたときにね、スゴくキレいな空がね、もうパーって広がってて、もう感動しちゃって…その日は一日中泣いてたんです。それでなんかスッキリしちゃって、次の日にはこのシングルの詞の原形を仕上げてたんです。
h : へー、ドラマチックだね。
M : うん。フフフ。
h : じゃあもうこの歌詞っていうのは、その青空から受け取ったものをパパパーって言葉に変換していった感じなんだ?
M : そうそう、そういう感じです!上手いこと言いますね〜!(笑)
h : いたみりやす。では、その歌詞の内容について根掘ったり葉掘ったりしていきたいんですけど、ひとつすごい気になったフレーズがあったんで、そっから聞いていきたいんですけど…。
M : ハイハイ、どこですか?
h : えー、「プラットフォームでキスをするのがボクらの勇気」っていう…
M : いいでしょそのフレーズ!ポッて浮かんだんです、ポッて(顔の横で右手を開く)。
h : ECHOESのさあ、ステラっていう歌知ってるの?
M : えうっ、な、なんでですか?
h : 「プラットフォームでキスをしてみないか」ってフレーズがあるんだよ。だから知ってるのかなぁって。
M : ええーッ、そうなんですかぁーッ!?
h : 池上遼一のマンガみたいな驚き方だな。
M : えーホント、あたしその歌全然知らなくって。ECHOESってあの、辻ナントカさんがやってたバンドですよね?
h : そそ。
M : あ、でもあの歌は知ってます。カンノちゃんがやってたドラマの…タイトル知らないんですけど、ず…愛をくださーい♪っていう歌。
h : ず、って言いかけてなかった?いま。
M : え、言ってなくて…「あ」をカンだんです。
h : 「あ」をカンで「ず」?
M : あをカンでずです。
h : あをかんでず…あおかんで…?
M : あの、先に進めません…?
h : え?あぁそうね、その方がいいね。えーと…さっき、原形、という言い方をされましたけども、これはじゃあ、最初出来た詞とはかなり感じが変わってるの?
M : あ、ハイ。初めは、キックオフみたいな感じで…落ち込んでる友達を励ます的な。それで麻田さん(プロデューサー)に見てもらったら、もっと、シチュエーションってものを考えていかないとすぐ煮詰まっちゃうよ?って言われて。たとえば、この会話を友達同士じゃなくて恋人同士でやるならどうなるだろう?って考えながらもう一度書いてごらんってアドバイスしてくださって。あーそういう書き方もあるんだぁーって思って…え、なんで泣いてるんですか!?
h : いや、あの、大丈夫、なんでもない、気にしないで(鼻水)
M : 気になりますよ。
h : (そりゃそうか)ちょっと失礼(鼻をかむ)。いやごめん。ミユタンの成長に感極まって涙が出た。
M : そんな風に言ってくれるのホロウさんだけですよ。嬉しいなぁ。
h : そうなん?
M : そうですよ!この前の人なんか、「今度の曲はロッカバラードだそうですが…」って言いながらヘッ、みたいな顔してるんですよ?ヒドくないですか?
h : …
M : あ、笑ってるでしょう!
h : いや笑ってねーもん。全然笑ってねーもん。
M : (ほっぺたを膨らませる)
h : で、ラブソングの形態になった、と。
M : あ、そう、そうなんです。でも、なんだか嬉しいな。
h : なにが?歌えることが?
M : それもなんですけど、辻さんみたいな小説家の方の書いたものと、自分の書いたものがちょっとリンクしたっていうのが。あたし辻仁成さんの小説、いっぱい持ってるんですよ。大好きなんです。
h : (これがつっこんだら負けってやつかと思いながら笑顔を浮かべている)音楽は最近どんなものを聴いてる?やっぱりロックよりになってるの?
M : そうなんです!最近あの、AR…B?にハマッてて!もうカッコよくって〜。
h : ハマッてるもんを疑問形で言うなよ(笑)ホントにハマってんの?
M : ホントにハマってるの!あの、「魂こかして」とか。
h : それは足ばらいかなんかの歌ですか?



【いつだって Blue Sky】
作詞 篠田美優



君がいるからね いつだってBlue Sky
眠れない夜も 青空に変わるヨ
君といるからね いつだってBlue Sky
悲しみの今日も 輝く明日に

時は急ぎ足で ボクらを そう 追い越してく
うつむいたままの キミの瞳に 何も言えなくて ただ

つないだ手の ぬくもりだけで みんな伝えられたら いいのにナ…


君がいるからね いつだってBlue Sky
悲しまないでよ 心を開いて
君といるからね いつだってBlue Sky
負けるもんかって 暗闇に叫ぼう

いつもの二人とは 違うコトしてみようヨ
おしゃれな服を着て 人ごみに飛び込もうヨ

プラットフォームで キスをすることが ボクらの勇気だ そう信じて…


難しいことじゃない 笑わないで聞いて なにも出来なくても 僕らは自由なんだよっ!


君がいるからね いつだってBlue Sky
眠れない夜も 青空に変わるヨ
君がいるだけで いつまでも そう My Blue Sky
二度と離さない このあたたかな手


(セリフ)

「だから 大丈夫だよ、どんな暗い夜も きっと…」



h : それにしても思い切ったことしましたね。
M : え、何がですか?
h : セリフ入れるとか。
M : ああ。なんか、全部書いてざっと読んだときに、なんかすごく足りないものがあるような気がね、したんです。で、あれこれ試してみたんだけど、なんかこう、素直にね、いまの自分の気持ちを言うのが一番いいんじゃないかと思って、そうしました。
h : なるほど〜。それでは今後の予定なんですが、まずはアルバム発売?
M : はい。で、出来れば!そのアルバムを引っ提げて、ツアーしたいと思います!ライブハウス中心になると思いますけど(笑)
h : どん底から這い上がってきたミユタンの、今後の活躍に期待します。
M : ありがとうございます!頑張りまーす!
h : あ、アレなんつったっけ、ECHOESが歌ってたカンノちゃんのドラマの主題歌って。
M : え、ZOOですか?あっ…



                                   ◆


ミユタンの一言メッセージ

ミユタンはまけなーい!Never give ap!!
やばっ、テンション高すぎぃ〜(笑)
(^O^)/


散文(批評随筆小説等) アイドル2 Copyright ホロウ・シカエルボク 2010-07-08 22:19:35
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