ほし文月
小池房枝

ここは雲の真底すずしい風が吹くじきに全てが雪崩れ落ちて来る

夕映えのお天気雨が東方の空高く架けた主虹副虹

緑から朱へまた赤からまた青へ 光と水のクロマトグラフィー

美しい挿絵のゲーテの「メルヒェン」の蛇の化身のごとき大虹
 
夕方の一番混んでるスーパーで働くおじさん虹を見ていた

「オーバーザレインボウだね久しぶりだ」駐車場誘導係員さん

幽霊じゃなくて二本の足がある虹 屋上にしっかり立ってた


幾重にも重ねた気流の層ごとに細波を描く夏の薄雲

ばら色のあの雲どこから来たのだろう天気図ひろげて源を探す

日蝕を済ませた空はほっとしてまた改めてざばざば降ってる

二、三日もすれば夕方三日月が何もなかった顔してるだろう


七夕の夕方の空は雨上がり夕焼け雲は急いで晴れてね

七夕にスタートダッシュで駆け出した二人に笹のエールを送ろう

七夕の日の昼下がり雨上がり短冊も笹もさぁ乾きなさい

七月も八月のそれも星の逢瀬どちらの夜もかないますよう

織姫と牽牛世界中ありったけの暦で二人が会えたらいいのに


水滴のような銀河もあるだろうサトイモの葉のしずく転がす
 
水滴のような密度で透明な宇宙もあるかしずく零れる

卵かな?それ蛹かもしれないよ。宇宙が丸ごとふわりと羽化する

妖蟲の中の宇宙に要注意 渦巻くホットな不可視物質

輪廻する宇宙 回虫 虫下し飲めばたちまちビッグバンかな

エンドピン大地にぶすりと突き刺して宇宙に地球を反響させよう


地球には毎日昼と夜があって星が見られてとてもうれしい

流星を呼べたらいいな星屑も1ミリ以上は危険だけどね

夜明け間近半月火星を従えて東の地平の向こうを見ている

明るすぎず 暗すぎもしない夜をあげる 半月そっと星を見守る

アイ、オイ、マー、カマル、ヤレアハ、チャンディラム、
ルルイエの海に降りそそぐ月
 

みなさんもう眠っていますか。金星が東の空で光っています。

星になど何故ひとは願う時として世界はひどく美しいけど


短歌 ほし文月 Copyright 小池房枝 2010-07-06 19:41:47
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