真夏を待つ
橘あまね

雨を聴くひと
土を嗅ぐひと

奏でられる調べには限りがある
奏でられない調べを夢にみすぎて
からだを置いてきた場所を
遠ざかってしまう

胸の奥には想像上の内臓があって
白いバラ線にからみつかれたまま
土と液体をやりとりしている
ときどき太陽がこわくなるのは
きっとそのせいです

重さを逃がすことができない
支えきれないので
横たわる
役立たずの骨格なんかなくなってしまえばいいのに
そうしたら
雨と土だけを糧に
本当のからだをつくれるのに
青色に向かって成長するからだを
ずっとほしかった

青色のむこうをぼくは知らない
越えられないへだたりの
むこうがわを知らない
何があるかしら
しあわせな人たちがいるかしら
古い思い出をひろえるかしら

真夏の予感を浴びて
太陽を待つ
あのひとたちのようになりたい


自由詩 真夏を待つ Copyright 橘あまね 2010-07-06 16:50:13
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