こどもの白昼夢
梨玖

堪能するなら今のうちだよと誰かは行った
記憶の端っこを泳ぐような
四方何処までも蒼い水の中を私は回る

熱帯魚に似た鈍色の魚達の
柔らかい声に耳を奪われる
「何処へ行くの」
「どこへいくの」
「ドコヘイクノ」

「迷子になるのも厭わないなら、
どうでしょう、一緒に向こうへ?」


鈍色の魚の群れが周りを囲んで
竜巻のように襲い掛かる

すこし怖いよ
すこし怖いよ

「大丈夫だよ」
「だいじょうぶだよ」
「ダイジョウブダヨ」

「このまま何処までもいけるのなら
楽しもうよ、今のうちだよ」


はやくおいで
はやくおいでよ
囁くのは誰

るりるらら
るりるらら
歌うのは誰?





















きんこんかんこん
きんこんかんこん
鳴るのは何処の鐘?

視界は茶色い木目
薄汚れた鉛筆のこすれ

一気に覚醒したら、大人に怒られた

ずいぶん前に開いていた教科書の
挿絵は確か水彩画の大きい魚だったような気がする

机の上での白昼夢
私は確かに人魚だった



自由詩 こどもの白昼夢 Copyright 梨玖 2010-07-04 23:25:36
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