探索
葉leaf



航行すべく人は完熟し、窃取された内側と内側に、逆らう砂の世紀から離れて、泳ぐ翼を縫い合わせている。だが石は諦めていた、露悪するだけの岩すらないことに。飛魚は絶望していた、感光するだけの直線すらないことに。叱ってください、産み過ぎた戦略の世紀末を。なぞってください、楽園を固く結ぶ人の手つきを。



心をおとしめて、息をはたらかせ、花を唱える先から。五月の引き際にはもはや、陶器に下された妹からはさらに。削減された冬のあらしが、気に入りだした脈拍が。呼ぶ、さげすまれた一瞬の繊度から、すべての尺度から孤絶したゆえに、ひとつの官意から連なり込んだといえども。なぜなら、それゆえに、敷衍すると、石。



私が死んだら死はどうなるか。生きているから死にも存在価値があった。私が死ぬことは死が死ぬことと同義だ。だとしたら死は不可能ではないか。私は永遠に死ねない。そして死を論ずることは論を殺すことに他ならない。論を殺すことは論そのものである私を殺すことに他ならない。ということは私は死の不可能性を論ずることで死の可能性を証明した。



夜空に囲まれた並木荘の屋根裏で、永遠探偵武蔵は助手のチンギス・ハンと鬼ごっこをしている。
武蔵 鬼をも殺す、魚の鰭々、十一年目に、あの娘を知った。ハン、走る目標を失え。脚がなくなっても走れるくらいに。
ハン はい、大佐。ところであそこで自分の心臓を設計しているのは何人目の依頼者ですか? おっと、足元の太陽が危ない。
武蔵 マイナス五人目だ。プラスでいったら八人目。気をつけろ、俺たち二人とも鬼だから、鬼ごっこが爆発しそうだ。依頼者の、口の外、錘から、ただれる情報。
ハン ところで今回の依頼はなんでしたっけ。おっと、こめかみにホームランボールが飛んできた。
武蔵 依頼者に依頼するように依頼した人間を探すこと。依頼に内容はない。ただ依頼という行為をさせた人間を探すこと。
依頼者はいつの間にか心臓を完成させ自分の心臓に中毒死する。ハン、武蔵に依頼者の肉を食わせる。武蔵は犬のように尻尾を振って跳び回る。
ハン やっと見つけた。これが探していた犬だ。


自由詩 探索 Copyright 葉leaf 2010-07-04 09:35:09
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