雨垂れる黙祷
水川史生

ガラスのような爪の角度で傷 喉を焼いた消息のもとに
運ばれる鉄線が 初めの陶酔に塗れている
帰るんだ 相殺するみたいな声だけで わたし と定義する
浸されていく盲目に 色を混ぜては瞬きをする あなただ

白く広げるパラボラに注ぐ 跳ね返る充足が、空!
ペニシリンを打ちこんで 紫の切っ先で抉る余白がてのひら
滲み出し残照に暮れている あなたの首筋が赤く燃える
伸びあがる植物の発光する水辺で 嘆くのを待つ太陽だ
どうしても あなた 輪郭が曖昧になる
映らない明滅上から 放たれて尾を引く影
鋭角から滴る その一滴に混ぜた溜息が
午後のわたしを沈めて眩む

鳴いているのをなぞる 明く前の叙情が揺れる
引き攣れる痛みで撫ぜられる 辿るまで祈るような流れを
あなたの哀傷を抱いては 震えるようだから

あなた

横たえる身体が ゆるり 静けさに変わって あなた
自由な情景で待っている 冷たさを奏するその手で
帰るんだ 浮かぶいくつもに叶えている
垂直に飽く寝室で 微睡みながら

外枠がしとやかに濡れている
指先から失われていくように わたし 沈んで
さよなら


自由詩 雨垂れる黙祷 Copyright 水川史生 2010-07-04 07:23:44
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