心の箱庭
半島

もう僕の蔵には
ひと握りの米すら残っちゃいません
肌を通り過ぎる風に目を細めつつ
両手を広げるのみです
ハッカの香りが立ち上り
空をますます青くします
青空はいいものです
苛立ちも焦燥も全て吸い込んでくれます
けれど僕の蔵にはもう
吸い込まれるものなんてありゃしません
ほら、ご覧なさい
遠く高く鳶(とんび)が飛んでいきます
ゆっくりと輪を描きながら白雲を裂くように飛んでいます
この草原はなんの実りも与えてはくれませんでした
ただ僕の胸をざわつかせただけで
泣きいるようにすがっても
わめくようにすがっても
何も満たされはしませんでした
ここらは見渡す限りの緑ですが
あの遠くに見える針葉樹の山々
歯に沁みるほど冷たい小川の水
全部、全部飾り物です
ここらはみんな
僕にとっては
緑の色の荒れ野です


自由詩 心の箱庭 Copyright 半島 2010-07-01 03:26:46
notebook Home 戻る