アポトーシス
城瀬

わたしはときどき、こうして手をかざして
かつてこの指の間に存在していた
細胞たちのことについて考える

彼らは、この空間を作るためだけに生まれて
この空間を作るためだけに死んでいった
彼らは、この空気の感触を覚えることなく
この地球から姿を消してしまったのだ

彼らはそのとき、何を想って消えていったのだろう
彼らはそのとき、何を願ってこの指から去っていったのだろう

わたしはときどき、こうして手をかざして
わたしのこの手を形成するために
自らその命を絶っていった
細胞たちのことについて考える


自由詩 アポトーシス Copyright 城瀬 2010-07-01 03:18:25
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