BANANAな
salco
バナナのプロパガンダ
バナナは長い
バナナは黄色い
バナナは湾曲している
バナナは南国産である
バナナは安い
バナナは皮剥きやすい
傷みやすい 黒ずんで行く
バナナは可愛い
バナナは硬くない
バナナは柔過ぎない
バナナは甘い
バナナはエグい
バナナの事をママはあたしに教えない
今や珍しい食物でも高価な果物でもない
神代には高貴なメロンの緑の右側で
麗々しく存在を主張していたものだが
もうお見舞い籠にも盛られない
恨みがましい北国の 薄ら哀しい北国の
たわわのリンゴにも負かされてしまった
バナナは魔法使いの鼻
バナナはゴーギャンの白昼夢
バナナはサルのごほうび
バナナは物価の埒外
バナナは貧乏人のおやつ
しつけの悪いガキ共の口封じ
ピーナッツ・バターでサンドすれば
過保護児エルヴィスとママ・グラディスのひと時
バナナは資本主義を体現する
生産地は巨大資本に貧困を提供する
搾り上げ、買い叩いた汗と骨を肥やしに
バナナはスーパーマーケットで二束三文
フィリピン農場労働者の賃金も二束三文
自給自足じゃ家族が死ぬるぬるから
このワンコインを攀じ登り滑り下り、
いったい何百房分を採ることだ?
桃かイチゴかオレンジ西瓜ぶどうか梨か
消費者は食指を誘う果汁の記憶を選択する
我々の食べかすは溢れる残飯となり海岸線を埋め尽くす
我々の糞は海を渡って生産地にぼとぼと落ちる
アメリカン・ドリームは勿論
フィリピンにチャンスは永劫存在しない
こっちがほんとのバナナ・ダイエット
バナナなんて珍しくもない
あたしはとっくに食べ飽きちゃった!
楽園の食生活
南の国の宮殿で 起き出したお姫様
ひんやりとした床の上 足の裏はもう熱い
朝食はココナッツ・ミルクとモンキー・バナナ
スリッパを履いたまま、朝っぱらからモンキー・バナナ
あの娘はアレが大好きで、その事ばかりを考えている
お風呂の中であんよを突き出し、歌の中でもそらんじて
歯磨きしても冗舌で、味の事は忘れない
お手手を洗い忘れたまま、昼ごはんもモンキー・バナナ
ほんとの恋がしたいなら、男は素朴な方がいい
美丈夫なのも良いけれど、女もいつまでお姫じゃない
若い女が星の数ほど男の目玉に映るなら
そしてあんたが萎びて行くなら 季節に秋が来るならば
男は馬鹿な方がいい 豚のように愛してくれる
豚は飽きずにいつまでも
脳みそなんかない方が 男も女も幸せだ
むんむん蒸す蒸す密林奥地 けだもの達が呻いているけだももも
猫の目が羽虫や鼠を探すように、好物を求めてヒトの目も光る
これさえあれば3千足の靴なんかあたしは要らない
そう言っている
だから女はアイラインを引くんだよ 唇を赤く塗るんだよねえ踊ろ
マシーンみたいな男がいい モーターが焼き切れるまで動いている奴
サーモスタットがない男、どこでもスイッチが入る奴
一年中発情している 一日中発動している
何故なら彼女は疲れない 何故ならお姫は一日中ぢゅうキスせがみ
半開きの唇みたい いいいいい
体がバラバラになって、天国の高みに砕け散るまで!
黄金の夕陽が風を窒息させて 摂氏40℃の汗が体を溶かしても
ベッドはギシギシ動いている エンジンかけっ放しの自動車みたい
半眼の瞳が虚ろに宙をさ迷い 突き上げる快楽に溺れっ放しの人形は
四肢の感覚も麻痺しているが ヒクヒクだけは止まらないいい
やがて涼しい夜が来て 窓の外を徘徊し出しても
彼女は離れて欲しくない 夕食ももも
蜂蜜のたっぷりかかったモンキー・バナナ
夜食もやっぱりモンキー・バナナ
――8時半、執事が現われて
ティッシュの山と男の死体を片付けるける
お姫様はお水を10ガロン飲みひと眠り ZZZZZZZ…
夢でもやっぱりモンキー・バナナ!