ぷちぷちシート
桜 葉一

ぷちぷちシートを潰すことが
私のストレス解消法でもあった

その晩も
テレビを見ながら私は
ぷちぷち
とやっていた

突然
どこかから叫び声が聞こえた
テレビではないらしく
気のせいかと思って
また
ぷちぷち
とやっていると
今度ははっきり
男の叫び声が聞こえた

ぷちぷちシートから聞こえたらしく
よく見てみると
そのひとつひとつの
ぷちぷち
のなかに
まるでマンションやアパートのように
小さな人間が住んでいるのが見えた

おもしろいとおもい
よく観察してみると
1人暮しの人もいれば
家族暮らしの人々もあった
喧嘩をする夫婦もいるし
夜の営みを楽しむ夫婦もいる
人がいないところは
きっと空き部屋なのだろう

さっきの叫び声は
ここの住人を潰してしまったのだろう
悪い事をしたと思ったが
仕方のないことでもある
人がいるところはもう潰せないので
とりあえず
空き部屋をつぶすことにした

ぷちぷち
ぷちぷち

とうとう空き部屋を潰し尽くしてしまい
それでも潰したり無かったので
これは仕方のないことだと
自分に言い聞かせ
人間の住む部屋を潰すことにした
ゆっくりと親指に力を入れようとすると
中の人間がこちらを見上げ
必死の形相で
首を横に振った

それがあまりにも滑稽で
私は笑い転げた
他の部屋でも試してみると
両手を合わせ神にいのるもの
泣き出すもの
あきらめたのかぐったりとしてしまうもの
様々でそれを見るだけども
楽しかった

ぷちぷちシートには
こんな楽しみかたもあったのかと
その時はじめて知った
みんなは気づいているだろうか
あした聞いてみよう

その時窓の外に肌色の何かが見えた
ミステリーサークルみたいな
変な模様のついた
肌色のなにかに
力が入ってるのが分かった

空が歪んだ気がした
嫌な予感がした



ぷちっ


自由詩 ぷちぷちシート Copyright 桜 葉一 2003-10-08 23:01:00
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