におい
桜 葉一

ヤツが残していったものは思いのほか大きい
下着や趣味の悪いCDもすべて置いてったままだ
メールはすぐに消してしまえるけど
突然いなくなって
ずるい......

2年間ヤツと暮らした部屋は思い出が壁を埋め尽くし
すべてを剥いでやっても 新しい壁が顔を出す

ご丁寧に煙草だけは持っていったみたいで
今は銘柄の違う2本の煙草が
置手紙もない殺風景な机の上の灰皿で
横になっている

それよりもなによりも
ヤツが残していったもっとも大きなものは
いつまでも鼻に残る
ヤツの甘い匂い


自由詩 におい Copyright 桜 葉一 2004-10-10 23:02:47
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