宇宙
山中 烏流

光源を探す
おおむね一畳分の
敷布団の上で

そこの始まりには
しん、とした空気があった
同時に
何かが老いたような匂いが
そこら中に漂っていて
わたしは
そこで口からの呼吸を覚えた
揺れる蛍光灯の紐を
長い間、見ていた



最近の鳥に
昼夜の隔てはなく
カーテン越しの風景には
いつも
黒い染みを見るから
少しずつ、日々に飽きていく

冗談で遺書を書いた日に
ついでで買った
強めの睡眠導入剤が
初めて、役に立ったときは
少しだけ
偶然の存在を
信じる気になった

そんなこともあった
確か、三日前の話だ


寝返りをうって
いつかのことを思い出す
首の下で脈打つ、ひとの腕を
愛しく思っていた頃のこと

わたしが寝返りをし過ぎたせいで
よく眠れなかった、と
そのひとは
苦笑いで言いながら
私の頭に
手を、伸ばしたりした


似通ったラブ・ソングを
いくつも聞いては、その度に涙できるほど
空っぽではなかったから

毛布の重さを頼って眠るわたしを
二目、見ようとするひとは
現れなかったのだろう
そんな、気がしている


外を走るバイクの音が
ゆっくりと、少しずつ遠ざかっていく
他人のことを考えられるほど
余裕のあるひとであったならば
この、一瞬の静けさに
まどろむことも
可能なのだろうか

鳥の声がうるさくて
カーテンに映る染みが
少し
濃くなったのを見る
そこを離れたら何処に行くのか、と
問いかけた声で
染みは消えてしまった
羽ばたきの音だけが
そこに
置き去りになって


呼吸の音が、重なる

酷く
うるさい





自由詩 宇宙 Copyright 山中 烏流 2010-06-17 23:34:03
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