黄金の夜
salco

金色のマヨネーズが冷蔵庫のドアの間から
にゅるにゅると出ており、
まるで××の○○みたいに
にゅるにゅると出続ける
あたしはスリッパの先で食い止めようとしたけれど
マヨネーズはヘビみたいにするりと身をかわす
ヒステリックに床を這いずり回る
酢の刺激臭がキッチンに満ち満ちる
マヨネーズは尽きる事なく、生き物よろしく走り出る
先端は脱出を求めて自らを追い詰め恐慌に狂乱している
私は椅子の上に避難してこの独善サーキットを眺めている
テレビをつけると四角い顔が現れ、
それはやはり四角い眼鏡のアナウンサーで、
世界中でのマヨネーズの発狂を告げている

夢でなければこれは一種のクーデターだろうか
卵と油、これがヒントか
それではケチャップはどうだ?
イタリア人が困るじゃないか
マクドナルドもだ
だが今のところ流血は無いようだ
床を見ればマヨネーズ一色
どこが先端だかもう判らない
出口を探して狂奔しているそれは恐らく
頭部を切られた蟻の引き伸ばされた一瞬に似ている
滑稽でありながら不気味
悲惨でありながら人を笑わせる
そう、人はまだ笑っていられる

冷蔵庫を開けてみれば何と!
マヨネーズのチューブは子宮となっていた
そこから腐れ落ちた胎盤が続々と吐き出されている
胎児などいはしないのに
胎児は太古の昔からケチャップの中に溶けてしまったのだ
終末の継続が床を転げ回っている
ふふん、卵と油
産出されるがどちらも儚い地下資源。ってか?
酢?
酢は食えない女のメタファーさ!


自由詩 黄金の夜 Copyright salco 2010-06-15 22:57:49
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