冬
本木はじめ
誰もが安易に描くことの出来る草原の断片をひろいあつめて
籠とゆう籠のそとがわを不安定している
蝶の羽根越しに開かれた冬へと
踏み込む
回転するはばたきはすぐに閉じ
巨大な雪山に遭難する
吹雪のなか
どこまで歩いても
時折反射する生活じみた無数の影が
あざとくつきまとう
きみのいる村を探す
もはや亡霊のように
途方もなく脚の無い歩行
城に辿り着けない測量士みたいに
迷路のような一本道を道草する
僕はおいてゆくだろう
今はまだ話すときではないから
小石が河原でじっとしている世界から遠くはなれ
もはや気づかない火の粉に
地図は燃えたので
雪山も冬も蝶も砂も
ない
一対のわらじが化石しているような沈黙のあと
見ようとしないのなら
奈落してゆく
冬
――
極寒の寒村でおかゆを炊いている娘もまた認識とゆう米を咀嚼しかねている
自由詩
冬
Copyright
本木はじめ
2004-10-10 15:18:01