豊かなる曖昧
atsuchan69


土に帰らぬ朽ち葉を一枚、
あてどなく水面に浮かべた細流の
畔に立った子らに見送られては
水の音も爽やかにせせらぎ

淡くまぼろしのように霞み
遥か幽景の連なる墨絵のごとき山々
それでも輝かしい極彩色の虹が
たおやかな峰を背にみごとに現れていた

梔子の匂う、雨あがりの岸に
嵩も増した水面は眩く、
ひかりに散らされた傷み、
ほろ苦い想いに蹌踉として
いつか川底に沈めた恋も、刃も、

‥‥なにひとつ計り知れない
まして今も掴むことすら出来ない
それら一切の崩れゆく営みと、
交じりあう無垢なことばたちの艶。
うつし世は、豊かなる曖昧に紛れて

 ――迸り、流れゆく万象‥‥
 尚も、昼と夜とを反復するものよ――










自由詩 豊かなる曖昧 Copyright atsuchan69 2010-06-09 23:59:08
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