ehanov

木漏れ日が透明の窓を越えて
台所の裾を浸す
覆うものがないから、と嘆く声
窓からは遠い、それだから音声は近く
台所の散らばった腐った水に
音節のひとつひとつが反射する、
空き地に立つのが怖くて
夜の風が独りぼっちに痛んで、
確証という名の錆びついた譜面は
私の知るかぎりどこでも再現された
その音節は次の家を建設するのに
役に立たないわけではないが
目薬の一滴と桜の香りは
夜明け前、霞んで透明に移ろい
背中に負ぶさる冷たい午後は
放置された凍傷と崩れた桟橋を散歩する


自由詩 Copyright ehanov 2010-06-07 18:52:43
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