オレンジ色
あおば



オレンジは地獄の香りがすると気が付いたのは、
今から20分前だ。

汚れた薄いオレンジ色が雲に流れて、
辺りには誰もいなくなったので、
夏休みにも飽きたので、
誰もいない学校に行ってみたくなったので、
破れたフェンスをすり抜けて校長室の傍を歩く、
大きな音を立てて歩く。

誰もいない。
校長先生はどこに行ったのだろうかとも思わない。

カラカラに乾いた校庭にはなんにも生えてない。
なんにも生えてない。
なんにも生えてなかった。

日曜日の朝になり、ぼんやりと春の太陽が射している。
正門から大きなバイクに乗った青年が堂々とやって来る。
日直の先生かと思ったが、どこか緊張してるから違うだろう。
湿った校庭の砂を掘り起こすようにアクセルふかし、
大きくUターンして行ってしまった。

地獄の底にも蟻地獄が住んでいた。






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作2002.9.13


自由詩 オレンジ色 Copyright あおば 2004-10-09 21:16:41
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