青山一丁目から
吉岡ペペロ

ジョギングする人とすれ違った
ネクタイをゆるめた長身の男の腕をつかみ
バランスをとりながら女が自転車をこいでいた
こんな夜中にこんなところを男女で歩いているとは
ふたりはどれだけ寂しかったのだろうか

ひんやりした緑のにおいと輪郭しか見せない夜のひかり
有機物と無機物がほどよく調えられていた
青山一丁目から緑の要塞のような樹木の道をゆき
月面基地のような宗教団体の町をとおって
御所をすぎ新宿までふたりで歩いた
歩道橋にたって六本木ヒルズと赤い点だけになった東京タワーを見つめた
黒い鏡面のビルにそれが映って端に半月も映っていた

雅子さまのご病気を思った
こんな環境の良いところで病まれるとは
自然は人間に協力的なものではないのかも知れない
あふれんばかりの緑は人間のなにを豊かにするのだろうか



自由詩 青山一丁目から Copyright 吉岡ペペロ 2010-06-04 11:20:06
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