指先
ベンジャミン

小指の先が
少し内側に曲がっているのを
あなたは気にしているようでしたが

ペンを走らせるとき
他の指から少し離れているのが
文字のかわりに飛び跳ねているみたいで
好きでした

あなたの指先には
いつも淋しさがあるようで
何かに触れていないと不安そうでしたから
何でもいいから書くようにと
ペンを握らせたのでした

あなたの書く言葉は
あなたの指先のように繊細で
あなたの書く言葉は
あなたの指先のように
どこか淋しい気がしました

ずっと指先を見ていたのは
本当はそこしか見れなかったからだと
後になって気づきました

あなたの指先が
どこか淋しく感じられたのも
ただ自分の中の淋しさを見つめていたのだと

あなたが最後に書いた
「さよなら」という言葉を見て
ようやく気づくことができましたが

それはもう
伝えることができませんでした


自由詩 指先 Copyright ベンジャミン 2010-06-02 23:48:01
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