穂先
たもつ
砂でできた掌が
記憶の水に
崩れていく
そしてそれを受け止めようとする別の
掌がある
赤茶けた鉄路は
臨海の工業地帯へと続き
大きくカーブする
その付近で
群生する草の穂先がそろって頭を垂れ
夏へと向かう風に揺れている
今日一日わたしは
何も見ようとしなかったのだ
聞こうとしなかったのだ
触ることさえしなかったのだ
自由詩
穂先
Copyright
たもつ
2010-06-02 22:41:51
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