しずく
izumi

そんなに急がなくてもいいのに。
そんなに急いで、いいことあるの?

僕には君たちの気持ちが分からない。
君は僕の言わば…子供だけど、
今日はちょっと急ぎすぎ。
これじゃあ、僕から早く逃げようとしているみたいじゃないか。
どちらにしても、また僕の所に来るんだし
ゆっくりぐるっと回っておいで。
そして、その話を僕に聴かせて。
それが僕の唯一の楽しみだから。


私が窓を開けると、君たちがたくさんいた。
それは曲がることなくまっすぐと。
ある者は庭に。ある者はアスファルトに。

とても早かった。
それで自分を終わりにしていいの?
今の自分は今しかないんだよ、と教えてあげたかった。

私は外に出た。
私に当たる君たち。
君たちは、私に落ちた時から生まれ変わる。死ではなく、新しいものに。
私に当たった君たちは、こんにちは と さようなら を伝えて
次々と違う世界へ旅立つ。

ある者は花に、ある者は犬の飲み水に。
君たちがたくさん集まると、長靴をはいた子供の遊び場所に。
そこからは笑い声。
花を見た主婦からは、ほめる声。
水を飲んだ犬からは、ワンと。

あそこへ戻ったら聴かせてあげて。
きっと君たちの話に夢中になるはず。
そして知らない間に、この空を太陽に渡しているのだから。


10.2.10


自由詩 しずく Copyright izumi 2010-05-30 16:08:51
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