滝業
森の猫

思い立って
あたしは

東京の山
奥多摩へと向かった

目指すは滝

滝に打たれたかった

少し前 ブログ仲間が
滝業に行ったことを
アップしてあり
興味がわいた

そこへ 偶然
同じ 奥多摩の滝業の
番組を見る

ぴかっ

あたしの
五感の触手が動いた

あれだ

滝に打たれるんだ

電話をすると
ひとり旅の女性も
受け入れてくれるという

行くしかない

11月初旬
その年は
温かかった

奥多摩の駅に着き
傾斜のある坂をケーブル駅へと
歩く

頂上着
そこから 参道を宿まで
トレッキング

あぁ もうここでバテバテ
できるのだろうか?
山のそばを 食べながら
無謀な行為を思う

宿のひとの話では
直前に決めてもよいとのこと

気楽に出てきてしまった

夕食の時点では
まだ 決意ができてなかった

でも 宿主の宮司さんと
色々 自分の話をしているうちに

”あたし 明日 滝業やります!”
と 口走っていた

決まっていた 滝業のお客は
男性ばかり4人

女性は あたしひとりだった


朝 暗いうちに
広間で太鼓がなる

業に出る前に
朝のお勤めをするのだ

いよいよ
ズックの紐をかたく結び
滝のある山道を30分
歩く

甘くみていた
山道の30分は
あたしには

平地の1時間半くらいに感じた
みんなについていくのが
やっと

宮司さんは 遙か前を歩く


滝の音がしてきた

急な斜面を滝まで下る

ここで
男性は ペラペラなふんどし1枚

女性は死に装束のような
一重の着物

もちろん
ノーパン ノーブラ

大きな岩の陰で
ひとり身支度する

宮司さん指導のもと
儀式の唄をうたい

いよいよ
滝つぼの水を胸にかける

ひやっとした
シャワーがあったかくなる前の
あの感じだ

皮下脂肪の低い 男性達はもう
ここで
唇がわなわな震え
紫色になっている

あたしは
キモチいいかな
って感じだった

皮下脂肪の勝利だ

宮司さんに習って
脚 



と 3回滝に打たれる

えいっ! えいっ!えいっ!
と 皆 声にならない声で叫ぶ

最後に頭から
滝に打たれたときは
ゴムサンダルをはいた
足が
滝つぼに吸い込まれる
ように よろけた

だが
冷たいが
爽快な気分だ

やりきった感じ

宮司さんからは
滝まで歩くのが
やっとだから

止めとくように注意されていたが
ここまで 来たのに止める
気など さらさらなかった

男性陣は
皆 身体ごとぶるぶる
震えていた

わりと 平気だったのは
あたしだけ


帰りの山道は遅れながらも
あまり辛くなかった

滝業は終わった

自然を楽しむ余裕は
なかった

やはり
業だ

なにか
ココロの奥で
ふっきれたものが
あった

滝は冷たさより
上から落ちてくる
圧力のほうが
記憶に残っている

また
挑戦するか
否かは
体力のみだ


自由詩 滝業 Copyright 森の猫 2010-05-27 21:58:20
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