朝のこと
はるな
明け方四時から朝の六時ころにかけて枕に頬をつけ、真昼の十二時ころに目を覚ます。ところがどうかすると、四時から、五時、六時、するすると九時頃まで眠れないことが週にいちど程。そういうとき眠ってはいけない。わたしのからだが、おそらく朝にあいたがっている。
明けゆく空というのは、なんとも不思議であきない。なぜあんなぞっとするみたいに静かになるのだろう。そこからしゃりしゃりという音がして、朝のあかんぼうがりっぱな朝になる。わたしはおもうのだけど、植物と夜は性交している。そして朝のもとのようなものをうみおとしている。あの、明け方のぞっとするよな静けさは絶頂の余韻ではないかしら。あんなに植物が湿るのは、そのせいじゃないかしら。
しばらくすると小学生のむれが庭先をとおっていく。黄色い帽子をかぶせられて、箱のように滑稽なランドセルを背負わされて。一列で。蛇行しながら。わたしにはその時分の記憶があまりないけれど、いまのこどもたちの顔をみたって特別たのしそうだとはおもわない。放心したような、張りつめたような、でもこれから何かあるような顔。うすい皮膚のしたの血の巡りをみながら、わたしは不思議に思う。このひとたちはこれからおとなになるひとたちなのだなあと。
ひとり、ちいさな女の子が花をほめてくれた。
彼女はうすい水色の半そでをきて、黄色いベレー帽をかぶっていた。他の子とはちがう帽子。転校生?「お花きれいです。」そう言ってくれた。少し列からはみ出て、かつ遅れて。ありがとうと言ったけれどあまり聞こえていなかったかもしれない。もっと大きな声でありがとうと言えばよかった。
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