辞書をめぐるお話 第1話
たもつ
午前3時33分33秒になったら
こっそりと本棚から
辞書を取り出してごらん
99頁と100頁の間に
もう1頁できていて
そこにはとても大切なことが
書いてあるから
でもその大切なことが何であるのか
実は誰も知らないんだ
だって誰も見たことがないんだもの
その理由は3つ
ひとつめは
午前3時33分33秒を正確に守るということが
非常に困難であるということ
1秒でも早かったり遅かったりしては駄目だ
いや、0.000000001秒でもね
ふたつめは
辞書に気づかれてはいけないといこと
辞書はちょっとした振動でも目をさますから
こっそりと接近し
こっそりと取りだし
こっそりと頁を捲らなくてはいけない
みっつめは
このお話が
昨年の君の誕生日に語ろうと思って
披露し損ねてしまった
僕の作り話であるということ
でもどうだろう
今夜こっそりと試してみないか
午前3時33分33秒に
本を読むことが大好きで
辞書を捲るのが大好きな君
それは10年前に
君が産まれた時間