大好きな詩人を紹介してみます  「安西冬衛」
非在の虹

「春」

てふてふが一匹韃靼(だったん)海峡を渡って行った。



「春」という一行詩です。
作者は安西冬衛(あんざい ふゆえ)。僕の最も好きな詩人のひとりなのです。
安西冬衛の詩との出会いはまったく偶然です。
十七、八歳の頃だろうか、中央公論社版の「日本の詩歌」という文庫の一巻を手に取ったのです。
何かまったく知らない詩を読みたい、知らない詩を書く詩人を知りたい、そんな思いから本屋の書棚を眺めていました。
そして、安西冬衛はまったく未知の詩人でした。

年譜風に言えば、1898年 明治31年生まれ。 1965年 昭和40年に亡くなっています。

モダニストと言われる詩人です。

冒頭にご紹介した「春」という作品は、教科書にも載っている高名な作品だそうです。
しかし僕は教科書で読んだ事はありません。 僕の頃は、載っていなかったのかな。
もっとも「春」を知っていたら、安西冬衛の印象はまったくちがったものになったでしょう。
実は僕は、抒情的で美しい「春」よりも安西のロマネスクで、綺想と異国情緒にあふれ、そして退廃的な作品が特に好きなのです。
引用するのが一番ですが、ロマネスクな作風だけに、どれも長い。 ちょっと骨が折れます。
そこでタイトルだけ、記します。 
それだけでもこの詩人の書いたものの雰囲気が伝わるのではないでしょうか。

『軍艦茉莉』
『韃靼海峡と蝶』
『章侯爵夫人のScandale』
『無痛帝国』
『蟻走痒感』

いかがでしょう?  
当然のことながら安西冬衛の詩業はそれだけのものではないのだけれど、
『軍艦茉莉』を立ち読みした時の、「我、発見せり」という感動を忘れる事は出来ません。


できれば、ここでまた、大好きな詩人を紹介してみます。


散文(批評随筆小説等) 大好きな詩人を紹介してみます  「安西冬衛」 Copyright 非在の虹 2010-05-23 21:14:42
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