6月
吉岡ペペロ

街路樹の葉はひらべったくなっていた
この街にはもう新緑はなかった
木々や草が精子のような匂いを送り出していた

女が買い物にいくのを女の部屋で留守番した
低層階だから木々の先端がガラス戸ごしに見えた
そいつを寝転んで見つめていた

枝葉が風に揺れていた
曇り空だった
無音の不穏が胸に張りついていった

女が急いだような感じで戻ってきた
なにか手伝うのも嘘くさかった
ここから去ることばかりを夢想した

時間がまどろっこしくて重かった
それを掻き分けるように女のつくった飯を口に入れた
じぶんのやさしさが疎ましくて嫌になった

街路樹の葉はひらべったくなっていた
この街にはもう新緑はなかった
木々や草が精子のような匂いを送り出していた







自由詩 6月 Copyright 吉岡ペペロ 2010-05-23 16:17:37
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