指先から臆病
空白さん



身近に抱き合えば体ひとつ
こんなにも大きなあなたは
またわたしよりも遥かに
小さなものだと思う

腕におさまらない広い肩は
狭くこごまってわたしに甘え
触れる肌は当たり前に温かい

寝始めは丸く小さい姿も
夜更け頃には伸びきり腕を開いて
大きすぎる子どものようになる

深く長い寝息をたてるあなたの
掌がぱたりと投げ出されて

粉雪に触れたがるみたいに
柔らかな器の形の白い手が
闇に落ちた

白いまま固い指先は
かすかに油の滲みがついている
働き過ぎるあなたの手だ

なめらかとはほど遠いこの手に勝るものを
わたしは想像できないでいるけれど

あなたは何も壊したがらないし
その指先はねじれるように震え
いつも触れる事を怖がっている

あなたがもし花のようであれば
子供のままで赦されたのに

そしてそんな行き止まりのあなたを
また愛しく思うわたしの手は
もっと深い闇の色をしていた






自由詩 指先から臆病 Copyright 空白さん 2010-05-13 13:56:01
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