ほとり
瑠王

あらゆる情念は鳥のように去りゆき、今やもう海の彼方
きみの温めた卵はもう何処にも見当たらない
いづれ粉砕されるのを知りながら体温を分かち
最後まで希望と名付けることはなかった
そんなきみの熱情を消失という形でしか理解に至らなかったわたしの耳は
今、音を聴いている

世界の境界はなんと不定形な水際
最早、体感できぬ程かすかになってしまったほとり
もう別れの言葉さえ必要としない程に
いづれ此処には生温い大地だけが空しく残るだろう
宿り主のいない貝殻は波にさらわれることもなくなり
此処に在った事実さえも忘れて眠るだろう

わずかに残った本当の言葉を息吹にのせて風をつくる
迎えにやるのだ
その風が再び鳥達を引き連れて戻ってくる時
既にわたしの姿はなくとも
風よ、わたしの鳥達よ
潮で錆びた鐘を揺らしそれが目覚めの合図となることを
悠久を口にする軽々しさを
この世界すべてに警鐘を




自由詩 ほとり Copyright 瑠王 2010-05-10 17:34:46
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