全手動一行物語(1〜10)
クローバー


妻は、朝起きられない私がニワトリになろうと決意するのをみて、包丁を研ぎ始めた。


ほんとだよ、を繰り返す恋人の話に、うそでしょ、と繰り返す彼女は、恋人が嘘になるよう、お祈りするのを欠かさない。


彼女が3Dめがねを外すと、握っていた彼の手が、クシャリといった。


私は月の住人です、もう帰らなければなりません、とかぐや姫が言うと翁は、紙の住人だから問題ない、と返し帝はiPadをそっと姫に手渡した。


彼は、私はあなたの子猫でありたいと彼女が手を握ってきたので、彼女を養子にして、結婚してくれる猫を探そうと決意した。


私は一人なんだ、と泣き崩れるあんたの前にいるのは、それじゃ一体何なんだ。


ペットショップで、イヌを抱えていると、ミックスで、もう、コがつく年齢じゃないのですけれど、と店員が話しかけてきて、同じ種類でコが頭につくといいな、と答えると、手元からインクのにおいが立ちこめた。


溶けた君にアリが群がる、君を愛すと誓った日から。


老婆が歩くと、周囲の植物の茎が曲がっていき、それと反比例するかのように腰が伸びていく。

10
彼女は、青い目をした彼が目薬をさすのを見て、急いで傘をさした。


自由詩 全手動一行物語(1〜10) Copyright クローバー 2010-05-09 23:59:38
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